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DX Case
DX 事例
鈴木商店の実績について
Arboreta合同会社
森林管理コンサルティング
2022 ~
  • IT戦略
  • IT導入
  • 効果検証
はじめてのアプリ開発。熱意ある寄り添いで、森林の未来を守る事業に伴走してくれました。
  • IT戦略立案
  • 環境保全
  • アプリ開発
鈴木商店×Arboreta vol.1

はじめてのアプリ開発。熱意ある寄り添いで、森林の未来を守る事業に伴走してくれました。

intro
神戸大学名誉教授の黒田慶子さんは、森林の生態や病理を研究してきた研究者です。いまはArboreta合同会社を立ち上げ社会問題となっている森林の荒廃を止めるため、予防医学の観点から森林の健康維持に取り組んでいます。森林管理とビジネスをつなげるために必要だったのが「MORI TAGアプリ」。伐採前の木のカタログを作り、買い手を見つけてつなぐサービスです。MORI TAGアプリの開発を担当し、パートナーとして伴走する鈴木商店とともに、Arboretaの取り組みやMORI TAGアプリの活用、今後の展望について対談しました。
Interview
Arboreta合同会社
代表、神戸大学名誉教授
黒田 慶子氏
森林病理学、樹木組織学を専門とし、ナラ枯れやマツ材線虫病の発病メカニズムを研究する。その一方で、予防医学の観点から森林の健康維持に取り組む。2022年Arboreta合同会社を設立。
黒田 慶子氏
株式会社鈴木商店
代表取締役
鈴木 史郎
大手コンサルティング会社にて、ITコンサルティング及びシステム開発を経験し、2004年に鈴木商店のシステム事業部を設立。ミッションは「挑戦するお客様の力に」。
鈴木 史郎

森の立木を管理して買い手とつなぐ「MORI TAGアプリ」

ーー まずは、Arboretaが取り組む「森林を循環させるビジネス」について、その背景から聞かせてください。
黒田 :
今、日本の森林は放置されてどんどん枯れていっています。日本は国土の3分の2が森林で、木の種類もさまざまです。スギやヒノキなどの針葉樹は木材としてニーズがあるため、林業である程度管理されている一方、ナラやサクラ、カエデなどの広葉樹は使い道が少ないために持ち主が放置しがち。ともすると伝染病などが広がりやすく、どんどん枯れていってしまいます。そうして森林がなくなると、倒木や土砂災害、獣害といったさまざまな問題が起きやすくなるのです。
鈴木 :
最近、キャンプ場で枯れた木が倒れたことによる死亡事故もありましたよね。社会的にも森林管理への関心が高まってきていると感じます。
黒田 :
一般的な森林管理では「木が枯れたらやむなく切る」のですが、本当は「枯れる前に切る」ことが大事。持続可能な森林にするには、伝染病で枯れる前の木を切って若い林を再生し、資源として使っていくという循環が必要だからです。でも、伐採にはお金がかかります。特に広葉樹は、薪や紙の原料となるパルプチップしか使い道がなく、安価でしか売れないので、赤字になってしまうんです。でも3年前、一緒に森林調査をした家具メーカーさんが広葉樹の丸太を見て「これは家具に使える。多少細くてもいいから」と言っていて……木の種類や高さ、太さを記録しておけば、木を切る前に売れるのではないかとひらめきました。使えないと思われている広葉樹を売って利益を得られれば、放置林の問題も解決できると思ったんです。
鈴木 :
なるほど。黒田さんはもともと研究者として森を守る活動をされてきましたが、それを継続していくにはビジネスとつなげて、しっかり利益を出すことも大事ですよね。そうでないとボランティアの世界になり、結局続けられない。社会課題を解決するためにビジネスを考えるのは、本当の意味でのSDGsだなと思います。
黒田 :
これまで、広葉樹を売る方法は2つありました。一つは、木の状態をまったく見ずに、ヘクタール単位でまとめ売りしてしまう方法。手軽ですが、これだとかなり安く買い叩かれてしまいます。もう一つは、伐採後の木を原木市場で売る方法です。しかしこの方法でも、1本数十万円になるような良い木以外は、売れ残って薪用に安く買い叩かれてしまいます。そのうえ木は生ものなので、切ってしまった後は虫もつくし、早めに売らないといけません。また、運送費や保管費用もかかるため、切ってから買い手を探すと価格がどんどん下がってしまう。ビジネスとして森林管理を手がけるためには、立木の在庫カタログを作り、伐採前に買い手を見つける仕組みが必要だと考えました。
鈴木 :
古着を古着屋さんでまとめて売れば安く買われてしまうけれど、自分でカタログを作り、買い手を探せば高く売ることも可能になる。森の「メルカリ」みたいなイメージの仕組みでしょうか。
黒田 :
そうなんです。それが、自分の森の価値を把握して、適正に販売することにつながります。ただ、カタログ化するためには木のサイズを測ったり、識別番号を書いたナンバーテープを貼ったりしていかなければなりません。計測自体は素人でもさほど難しくないのですが、計測内容を手書きのノートに記録していると、どうしてもわかりにくくなってしまうんですね。ナンバーテープも3年ほどでだめになってしまいます。
鈴木 :
アナログの管理方法ではリスクが高そうですね。クラウドを利用して長期的にデータを保存した方が絶対に良い。
黒田 :
そこで考えたのが、伐採前の木のデータを集めてカタログ化できるアプリ「MORI TAG」でした。ナンバーテープの代わりにNFCタグを利用して、アプリに計測内容を登録します。木につけたタグをスマホでタッチするだけで、MORI TAGアプリに登録されている計測内容がすぐさま読み取れるんです。もちろん、集めたデータはグループ内で共有が可能。ユーザーが集めたデータを見て、どの買い手とマッチングできるか、今後どのように森林管理するかコンサルティングするまでがセットのサービスです。

ビジョンの実現を目指すパートナーとして

ーー そんなMORI TAGアプリの開発に携わったのが、鈴木商店でした。まずは、両社の出会いを聞かせてください。
黒田 :
MORI TAGアプリはビジネスモデルが評価されて、2022年にグッドデザイン賞の受賞が決まりました。ところが、アプリ自体は未完成だったので、とても焦っていて……もともとは別の会社にアプリ開発を依頼していたのですが、依頼した機能とは違うものが出てきたり、指定したデザインと違ったりして、開発会社を変えざるを得なくなりました。そんなときに、知人に紹介してもらったのが鈴木商店でした。
鈴木 :
あのときの黒田さんは、本当にすごく焦ってらっしゃいましたね。
黒田 :
もう必死でした!鈴木さんは初回の打ち合わせで「このスケジュールで大丈夫です」「この機能までは実装できます」と心強い反応をしてくださったので、これはお願いするしかないと思い、その場で依頼を決めました。急な話だったのに知人から聞いていた一般的なシステム開発の相場より低く、予算内に収めてもらえたのもありがたかったです。
鈴木 :
今回は補助金やスポンサーが付いたプロジェクトではなく、鈴木商店も安さを売りにした会社ではないため、黒田さんのご予算と折り合いがつかないかもしれないという懸念はありました。でも、事業の社会的意義や黒田さんの夢にかける熱量を見たら、心が動かされた。ここで断ったら鈴木商店の「挑戦するお客様の力に」の理念からはずれると思い、私たちも頑張らせてもらいました。
ーー 実際に鈴木商店と仕事をしてみていかがでしたか?
黒田 :
開発スピードがとにかく早かったです。NFCタグの読み取りや調査結果の登録など、基本的な機能を盛り込んだアプリが用意されたのは、相談から約一ヶ月後のこと。イメージしていた仕様やデザインに大きなずれがないことを、早い段階で確認できました。森林調査の流れを理解したうえで作ってくれたおかげで、山の中でも使いやすいアプリになっています。
鈴木 :
鈴木商店では開発作業を下請け会社に一切依頼せず、お客さんと打ち合わせするメンバーが直接手を動かします。なので、お客さんの意図を汲み取りやすいんです。
黒田 :
他社とは違う、エンジニアさんとの距離の近さはすごく感じました。できることとできないことをはっきり言ってもらえたのも良かったです。以前の開発会社は、要望を伝えると「必ずできる」と言うのにうまくいかないことがあって……。
鈴木 :
僕らはお客さまに耳ざわりのよいことを言うのではなくて、プロジェクトを前に進めることを大切にしているんです。「お客さまが神様」ではなく、「お客さまの目的が神様」。もっとも優先すべき目的を叶えるために、システムについて詳しくないお客さまのサポートをするパートナーなんです。
黒田 :
鈴木商店さんには、MORI TAGアプリで実現したいことを理解した上で、ご対応いただけて心強かったです。
ーー では最後に、今後のArboretaやMORI TAGの展望を聞かせてください。
黒田 :
アプリはひとまず完成しましたが、まだまだユーザーが少ないのでもっと広めていきたいです。現状は、登録データが少なすぎるのが課題ですね。使える木材があっても、データ化されていないとそもそも商談ができない。データを見せた上で、森林の視察を促していくことが大事です。
鈴木 :
カタログから販売するところまでの流れも、もっと活発にしていきたいですよね。広葉樹の活用は、エモーショナルな物語との親和性が高いと思います。例えば、子どもが生まれたときに木を植えて、結婚するときに家具にしてプレゼントするとか。
黒田 :
そうですね。昔は生まれたときに植えた桐を、嫁入り時にタンスにして持たせる慣習もありましたし。これからは、特定の所有者や土地の木をブランド化していくような試みも面白いと思っています。木製家具にQRコードをつけて販売し、それを読み込むと、原料になった木が今どう再生されているかが見られる、とか。国産の木は、成長過程や切った後の展開を追えるので、ストーリーがあるんです。
鈴木 :
それは面白いですね。企業側の商品開発と繋げることで、よりエモーショナルな部分が際立つと思います。
黒田 :
最近は家を建てる人向けに、みずから森林に行って家に使う木を選ぶという見学会も開催されているんです。家具でも同じことができると面白いですよね。日本のメーカーは品質管理が厳しいので、木に少しでも虫食いの傷や穴があったら使わないけれど、じつは傷や穴を「味がある」ととらえる消費者も多い。消費者が自分で木を選べば、そうしたギャップも解消していけるのではと思っています。
あと、私がもう一つ狙っているのは、1本の木を分割して複数の買い手に売ることです。家具に使える丸太はマグロのトロみたいなもので、ほかの部分は細かったり枝があったりして、産業廃棄物になってしまっています。でも、本当は工業材料やシイタケの原木栽培に使えるんですよね。丸太部分を家具メーカー、枝部分を化学系企業や製紙会社に売れば、伐採費を折半にできるし、木の持ち主は倍の収入が得られます。
鈴木 :
MORI TAGアプリを活用すれば、伐採前に交渉ができるので、そうした取り組みも可能になりますね。黒田さんの大きな展望を、これからもパートナーとしてサポートし続けていきます。
Arboreta合同会社
黒田 慶子
株式会社鈴木商店
瀧 寛文 / 植田 哲也 / 北川 遼哉